刺繍入りキーチャームのオーダー – 製作工程

2024-08-18

この記事は、昨年6月〜7月にかけて製作した刺繍入りキーチャームの製作工程です。

思い返すと、昨年2月にオーダーのご相談をいただいていたんですが、

当時仕事が忙しく、引越しもあって随分お待たせしてしまうことに。

メッセージのやり取りの中で、「急ぎではなく、気長にお待ちさせていただきます」と優しいお返事をくださり、

ようやく7月に製作完了してお渡しできたキーチャームでした。

ご要望

キーチャームのオーダー、教えていただいたご要望は3つでした。

  1. 茶色い革で1つ作って欲しい。
  2. 勤めている会社のロゴが四葉のクローバーで🍀、キーチャームにその「刺繍・ワンポイント」を入れて欲しい
  3. 金色の金具を使用して欲しい

お客様の中で最終的な仕上がりイメージがしっかり決まっていて、こちらからの細かい仕様確認にすぐにお返事をくださり、製作がスムーズに進められました。いつも楽しく作らせていただいています。

刺繍入りキーチャームの試作工程

クローバーのワンポイントですが、

革に刺繍をした経験がなかったため、まずはいくつか試作をしてみることにしました。

最初に試作したのは、革に小さく丸い穴をあけて、そこに緑の革をはめ込むというカタチ。

ここで一つ心配だったのが、はめ込んだ革が使っているうちにぽろっと取れて抜けてしまわない、ということ。

そこで、自信がなかったのですが、刺繍をしてみることに、

はじめは、縫うための穴と穴との間が狭すぎて破けてしまい失敗に。

次に、革を2枚重ねて接着してから(革を丈夫にしてから)縫ってみると成功しました。

キーチャームの仕上がりが17mm幅で、両サイドを縫うことも考えていたため、

お客様と相談後、できるだけ刺繍は小さくすることに決まり、

使用するキーチャーム用金具の確認と、

仕上がりのイメージ画像も確認していただき、製作に入りました。

刺繍入りキーチャームの製作工程

まずはじめに、革を0.5-0.6mm程度まで薄く漉きます。

使用する革はお客様が送ってくださった国産牛革/茶色です。

仕事でお付い合いのある家具メーカー様より、ソファーなどの端切れをいただいたそうです。

厚みが0.5-0.6mm程度になるまで何度か機械を通し、厚みを確認します。

画像にはないですが、薄くした革を2枚重ねて接着した後に、

刺繍をしていきます。

この写真では、薄い革を2枚重ねていることがわかると思います。

刺繍した糸を、裏側で切って、

半田ごてで熱し、糸を溶かしながら、糸同士を接着します。

平らになるまで熱処理をします。

同じ幅の革をもう一枚切り出し、

刺繍した革の裏面をヤスリで削り、(接着力を高めるため)

水性ボンドで、

刺繍の裏面が隠れるように接着します。

接着剤が乾いたら、

仕上がりの17mm幅まで両サイドを切り整えて、

染料を塗っていきます。

毛羽立ちを抑えるためと、重ねた革3枚のスジ跡を隠す目的があります。

一度の染め作業で綺麗にならないため、染料が乾いたら、

滑らかにするためにヤスリで磨き、

乾いたらヤスリ、染料を塗るを、滑らかになるまで繰り返します。

お客様と相談して、最終的にコバの色はホワイトに決まり、

ステッチはお任せくださるということで、ホワイト/オレンジで試し縫いをして、

私の判断で、コバと同じホワイトにすることに決めました。

少し余談、使用した工具の紹介です。

小さい革小物はできるだけステッチのピッチを細かくしたいので、この目打ちをよく使用しています。

この写真の目打ちはVergez Blanchardというメーカーの工具で、写真-右奥の「12」と印字されている工具4本を使うと2,25 mmピッチでステッチを仕立てることができます。

手前の3本は「11」と印字されていて、2.5mmピッチでステッチを仕立てられます。

自分で刃先を仕立てる必要があるため、使いやすいとは言えないのですが、ピッチが2.5mm以下の目打ちは世界中探してもこのメーカーしか作っていないようです。

Vergez Blanchard

Vergez-Blanchard – PRICKING IRON

エルメスの職人さんが使っていることで知られているフランスの革工具メーカーです。

価格は当時、2本歯で€33、15本歯で€251でした。注文して、コロナ禍でしたがフランスから日本に届くまでに1ヶ月ほど待ったと思います。

刺繍入りキーチャームの完成

ほとんど完成なのですが、最後に取り付ける金具の確認をしました。

最後の確認

金色の金具を使用することは決まっていたんですが、リングサイズの確認をさせていただきました。

細いリングは動きがスムーズ、

厚みのあるリングは、取り付け口(斜めになっている部分)の浮くクセが心配で、

キーチャーム金具につけると、厚みのせいで動きが硬かったのですが、

鍵をつけてしまえば気にならないだろうということで、

最終的に、高級感のある厚いリングに決めてくださいました。

金具はMK PLUSさんから仕入れたものを使用しています。

平角押二重リング 32×4   【真鍮製】

◆ キーホルダー、KHA-49、ネジ留め、差込くわえタイプ

仕上がり

最後に、キーチャーム金具を取り付けて完成です。

2.25mmピッチのステッチ、

糸は、毛羽立ちを抑えるボンド加工されたポリエステル糸を使用しました。

革を3枚重ねて、ヨレない・型崩れしにくい丈夫な作りになったと思っています。

長くお使いいただけますように。

YouTube動画

いただいた写真・動画

作品をお渡しできてから約半年、お客様が使用中の写真を撮影して送ってくださいました。

本当にいつもありがとうございます。

去年製作したブックカバーと一緒に撮影してくださいました。

ブックカバーはスケジュール帳を挟んで使ってくださっています。

 

ブックカバーの紹介動画も撮影してくださいました。

こっちにブックカバーを向けてくださるシーンがとても嬉しく思います。